特定技能「電気・電子情報関連産業」とは?業務範囲や必須要件を紹介

外国人雇用
公開日:24.03.24/更新日:24.08.22
特定技能「電気・電子情報関連産業」とは?業務範囲や必須要件を紹介

「特定技能」とは、人材獲得が難しい業種において、一定水準の専門性や技能を持っている外国人を受け入れることのできる制度です。特定技能制度により、即戦力となる知識やスキルを持っている外国人の受け入れが可能となりました。人手不足に課題を感じている企業が多い中、そのニーズは年々高まっております。

少子高齢化が進む日本人では、労働力不足が年々進み、人手不足が深刻な問題となっております。中でも、「電気・電子情報関連産業」分野は、人手不足による課題が深刻であり、即戦力となる人材を求める企業も多いのではないのでしょうか。

「電気・電子情報関連産業」分野は、在留資格「特定技能」で外国人の受け入れが可能です。特定技能制度を活用することで、多くの外国人を受け入れし、人手不足の解消が期待できます。

この記事では、特定技能「電気・電子情報関連産業」で就業できる業種や、外国人を受け入れする要件、技能試験について詳しく紹介いたします。

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特定技能「電気・電子情報関連産業」とは

特定技能「電気・電子情報関連産業」で就業可能な業種

特定技能「電気・電子情報関連産業」は、電気・電子情報関連産業分野での人手不足を解消するために設けられた在留資格です。

「電気・電子情報関連産業」、「素形材産業」、「産業機械製造業」の製造3分野が統合し、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」となりました。

「電気・電子情報関連産業」とは

「電気・電子情報関連産業」とは、電気や電子技術、情報技術を扱う産業分野です。産業分野は非常に広範で、工作機械などを用いて素材の加工や、機械の組み立てなどを行います。自動車の電動化や電子部品の需要拡大に伴い、今後も高いニーズが見込まれる分野です。

「電気・電子情報関連産業」の人手不足の実態

ニーズが拡大する中、「電気・電子情報関連産業」は深刻な人手不足の課題に直面している状況です。

法務省によると、電気・電子情報関連産業分野に関連する有効求人倍率は2.75倍(平成29年度)になっております。求職者1名に対し、2.75件の求人が存在することとなり、求人に対する求職者数が大きく不足している実態であることがわかります。

人手不足の影響は年々深刻化しており、2024年には約6万人が不足すると予想されております。

電気・電子情報関連産業の中でも人手不足が特に深刻なのが、プラスチック製品•製造工(3.70倍)、製品包装作業員(3.60倍)です。

日本人の労働力では補いきれない人手不足の課題を解決するため、特定技能外国人の受け入れが注目されているのです。

参考:電気・電子情報関連産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方

特定技能「電気・電子情報関連産業」で働く外国人の現状

出入国在留管理庁の令和4年3月末時点の統計によると、特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人数は3,258人です。前年対比で比較すると、前年対比で+2,264人(約328%)と、その人数は大きく増加しております。

分野の需要拡大や、「素形材」、「産業機械」、「電気電子情報関連」の特定技能が統合したことによる利便性の向上から、今後より増加すると考えられます。

外国人の国籍は、ベトナム、フィリピン、中国となり、3ヶ国で全体の約90%以上を占めている状況です。

令和3年3月末令和4年3月末前年対比
外国人合計994人3,258人327.77%
ベトナム657人2,391人352.97%
フィリピン97人328人338.14%
中国77人217人281.82%

特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」に統合された背景

特定技能制度が導入された当初、製造分野は「素形材」、「産業機械」、「電気電子情報関連製造」の3つに分かれていました。

同じ製造分野が3つに分かれていることで、一つの分野ごとに特定技能の手続きをする必要があり、受け入れ企業の負担は大きく、外国人が就業できる業務範囲も制限されておりました。

そのような問題点を解消すべく、2022年4月以降、製造業3分野は「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」として統合されております。これにより、特定技能の手続きが簡略化され、より運用しやすい制度になりました。

特定技能「電気・電子情報関連産業」で就業可能な業種

特定技能「電気・電子情報関連産業」で就業可能な業種

特定技能「電気・電子情報関連産業」を含む、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野での就業は、以下19種類業種で可能です。

  • 19種類業種
  • 鋳型製造業(中子を含む)
  • 鉄素形材製造業
  • 非鉄金属素形材製造業
  • 機械刃物製造業
  • 作業工具製造業
  • 配管工事用附属品製造業(バルブ・コックを除く)
  • 金属素形材製品製造業
  • 溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
  • 電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
  • 金属熱処理業
  • その他の金属表面処理業(アルミニウム陽極酸化処理業に限る)
  • ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
  • はん用機械器具製造業(消火器具・消火装置製造業を除く)
  • 生産用機械器具製造業
  • 業務用機械器具製造業(医療用機械器具・医療用品製造業及び武器製造業を除く)
  • 電子部品・デバイス・電子回路製造業
  • 電気機械器具製造業(内燃機関電装品製造業を除く)
  • 情報通信機械器具製造業
  • 工業用模型製造業

就業に関する注意点

特定技能「電気・電子情報関連産業」で就業可能な業種は、該当分類の製品を製造している事業所と製造ラインでのみ、受け入れできます。また、類似した分類の製造業でも、特定技能で就業可能な産業分類に該当しないケースもありますので、注意が必要です。

例えば、「16.電子部品・デバイス・電子回路製造業」の中の、液晶パネル・フラットパネル製造業 のうち、液晶パネル製造業 は特定技能で就業可能ですが、パーソナルコンピュータ用の液晶ディスプレイ製造業 の事業所、製造ラインには就業できません。

他にも「17.電気機械器具製造業(内燃機関電装品製造業を除く)」の中の、空調・住宅関連機器製造業のうち、家庭用エアコンディショナ製造業 は特定技能で就業可能ですが、業務用エアコンディショナ の事業所、製造ラインには就業できません。

産業分類についての詳しい情報は、経済産業省のホームページをご確認ください。

参考:対象となる産業分類一覧

従事できる業務区分

特定技能で「素形材」、「産業機械」、「電気電子情報関連」が統合される以前、業務区分は19区分に分けられていました。例えば「電子機器組み立て」の在留資格を持つ特定技能外国人は「電子機器組み立て」以外の業務を行うことができませんでした。

しかし、2022年に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」へ統合された際、業務の分類も「機械金属加工」「電気電子機器組み立て」「金属表面処理」の3区分に統合されております。

この統合により、旧区分が属している新区分の業務全般を行うことが可能となりました。

例えば、「電子機器組み立て」の在留資格を持つ特定技能外国人は、「電気電子機器組立て」区分内(以下②)の「機械加工」や「プリント配線板製造」などの業務にも従事することができます。

現在の3区分と旧19区分について

業務区分は、現在の3区分と、旧19区分は、下記のように分類されています。

①機械金属加工

  • 機械金属加工一覧
  • 鋳造
  • ダイカスト
  • 金属プレス加工
  • 工場板金
  • 鍛造
  • 鉄工
  • 機械加工
  • 仕上げ
  • プラスチック成形
  • 溶接
  • 塗装
  • 電気機器組立て
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 工業包装

②電気電子機器組立て

  • 電気電子機器組立て一覧
  • 機械加工
  • 仕上げ
  • プラスチック成形
  • 電気機器組立て
  • 電子機器組立て
  • プリント配線板製造
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 工業包装

③金属表面処理

  • 金属表面処理一覧
  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理

雇用形態と関連業務について

特定技能「電気・電子情報関連産業」を含む「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野では、特定技能の外国人の雇用形態は「直接雇用」に限られております。派遣での受け入れはできませんので、注意が必要です。

また、この特定技能は製品の製造や加工に従事するための制度ですが、関連業務にも付随的に従事することができます。関連業務の例としては、「原材料・部品の調達・搬送作業」、「前後工程作業」、「クレーン・フォークリフト等運転作業」、「清掃・保守管理作業」があげられています。

特定技能「電気・電子情報関連産業」で外国人を受け入れする要件

特定技能「電気・電子情報関連産業」で外国人を受け入れする要件

特定技能「電気・電子情報関連産業」で外国人を受け入れるためには、さまざまな要件が定められています。企業側と外国人それぞれに必要な要件を紹介いたします。

企業側に求められるの要件

特定技能の外国人の受け入れを希望する企業は、以下の3つの要件を満たす必要があります。

企業の業種

受け入れ企業の業種が、「特定技能『電気・電子情報関連産業』で就業可能な業種」にて紹介した旧19区分いずれかに該当している必要があります。複数の製品を製造している場合、該当業種の製品を製造している製造ラインでのみ、特定技能外国人の受け入れが許可されます。

「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入

「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」は、経済産業省が運営している団体です。受け入れ企業は、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入が必要です。

加入にかかる費用は無料(令和6年2月時点)で、加入申請は経済産業省のウェブサイトからオンラインで行います。複数の事業所を所有している企業は、各事業所ごとに申請を行う必要があります。

「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」の最新情報は、こちらをご確認ください。

参考:製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会 (METI/経済産業省)

特定技能外国人の支援体制

受け入れ企業は、特定技能外国人を支援する義務が発生し、支援体制の構築が必要です。

支援の内容は、出入国のための送迎や住居の確保、日本語学習の機会の提供、生活オリエンテーションなどが該当します。

支援体制の整備方法としては、「自社で支援計画を立てて実施する」、または「登録支援機関に委託する」の2種類があります。

詳細な受け入れ方法については下記の記事をご覧ください。

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外国人に必要な要件

特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」1号の在留資格を取得するには、「製造分野特定技能1号評価試験と日本語試験に合格する」か、「技能実習2号を修了する」のどちらかを満たす必要があります。

技能実習2号を修了した場合は、特定技能でも同じ業務区分の仕事に従事することができますが、他の区分の業務に従事したい場合は、該当する「製造分野特定技能1号評価試験」を受験し、合格しなければなりません。

例えば「プリント配線板製造」の技能実習2号を完了した外国人が、特定技能の在留資格を取得すると、「電気電子機器組み立て」区分の業務全般に従事できます。

しかし、「機械金属加工」や「金属表面処理」区分の業務に従事したい場合は、該当する「製造分野特定技能1号評価試験」を新たに受験し、合格する必要があります。

特定技能「電気・電子情報関連産業」の技能試験について

特定技能「電気・電子情報関連産業」の技能試験について

特定技能「電気・電子情報関連産業」を含む、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」の在留資格を希望する外国人が受ける技能試験は「製造分野特定技能1号評価試験」です。

試験についての情報や、試験問題について紹介いたします。

試験日程や開催場所

試験は国内外で幅広く実施されています。日本国内では、仙台から福岡までの10箇所で年に3回開催されており、海外では、インドネシア、タイ、フィリピンで年に1回開催されている状況です。

試験の申し込みは、特定技能外国人人材制度のポータルサイトから、受験者本人がオンラインで行います。申し込み時の際、試験区分と19の技能から科目を選択する必要があります。

例えば、プリント配線板製造を受験したい場合は、試験区分「電気電子機器組み立て」技能「プリント配線板製造」を選択します。

受験した試験区分によって、特定技能で従事できる業務の範囲が異なるため、注意が必要です。

試験当日は「学科試験」と「実技試験」を受験し、それぞれ合格点を取ることで「試験合格」となります。

試験に関する最新情報は、経済産業省Webサイトから確認できます。

参考:製造分野特定技能1号評価試験> 試験案内一覧

学科試験

学科試験は、ペーパーまたはCBT方式(コンピュータを使った試験方式)で行われます。30問の選択式で、合格点は総得点の65%以上です。

試験の範囲は「機械金属加工」「電気電子機器組み立て」「金属表面処理」のいずれかの、選択した区分に関する共通問題と、機械検査やプリント配線板製造などの、選択した技能に関連する問題から構成されます。

例として、試験情報ポータルサイトに掲載されている「電気電子機器組み立て」区分と「機械検査」技能の試験範囲と、サンプル問題を紹介します。

参考:https://www.sswm.go.jp/assets/files/exam_f/sample_02_11.pdf

「電気電子機器組み立て」区分共通の問題(試験範囲:安全衛生、品質管理等、一般常識レベルの問題)

◆サンプル問題:(問題2・器具等) 

電子部品をあつかう時はアースバンドをつける必要はない。

正答:×

「機械検査」技能の問題(試験範囲:測定、検査)

◆サンプル問題:(問題5・検査) 

不適合品を1個でも出荷してはいけない時は、全数検査を行う。

正答:○

実技試験

実技試験は、ペーパーまたはCBT方式(コンピュータを使った試験方式)で行われます。10問の選択式で、合格点は総得点の60%以上です。試験範囲は、機械検査やプリント配線板製造などの、選択した技能に関する問題となります。

例として、試験情報ポータルサイトに掲載されている「機械検査」技能の実技試験範囲と、サンプル問題を紹介します。

参考:https://www.sswm.go.jp/assets/files/exam_f/sample_02_11.pdf

「機械検査」技能の実技試験問題(試験範囲:測定、検査、図面、品質管理、力学)

◆サンプル問題:(問題15・検査)

 材料を損傷させない試験法を、選択肢A〜Dの中から一つ選びなさい。

A.硬さ試験 B.曲げ試験 C.超音波試験 D.引張試験

正答:C

まとめ

特定技能「電気・電子情報関連産業」は、製造分野において即戦力となる外国人材を確保し、人手不足の解消が期待できる制度です。

しかし、特定技能制度は複雑で、さまざまな手続きを求められます。自社での対応が難しい場合には、国内の人材紹介会社に相談することをおすすめします。

人材紹介会社は特定技能外国人の受け入れのノウハウを持っておりますので、受け入れまでのプロセスを効率化し、受け入れ業務の負担を軽減できます。

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