ベトナム人技能実習生の特徴・現状とは?人手不足解消なら“特定技能”という選択肢
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人手不足に悩む現場で、外国人材の受け入れを検討する企業が年々増加しています。特に「技能実習生=ベトナム人」というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。実際、技能実習制度におけるベトナム人の割合は約半数を占めており、受け入れ先の企業でも「真面目で勤勉」「手先が器用で覚えが早い」といった声が多く聞かれます。
一方で、経済発展や円安の影響を受け、近年では「思うように人材が集まらない」「定着しにくい」といった課題も浮上しています。
本記事では、ベトナム人技能実習生が多い理由や国民性、現状の変化とともに、制度上の限界や雇用時の注意点についてわかりやすく解説。そして、より長期的な人材確保を目指す企業に向けて、“特定技能”という新たな選択肢についてもご紹介します。
「今後もベトナム人材を受け入れていきたいが、不安がある」「技能実習制度と特定技能、どちらを選ぶべきか迷っている」——そんな企業ご担当者様に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
※なお、技能実習制度は育成就労制度へと変更になります。施行される時期は2027年を目標としています。

目次
なぜベトナム人技能実習生は多いのか?

人手不足の解消手段として、多くの企業が技能実習生の受け入れを進めていますが、中でも最も多く採用されているのが「ベトナム人」です。なぜこれほどまでにベトナム人技能実習生が日本で活躍しているのでしょうか。その背景には、経済・文化・制度のさまざまな要素が関係しています。
国別で最多|過去10年の推移と増加理由
出入国在留管理庁の統計によると、2024年時点で日本に在留する技能実習生のうち、ベトナム人は約20万人超で全体の半数以上を占めています。これは、2010年代から急激に増加した結果であり、もともと最多であった中国からの実習生数をすでに大きく上回っています。
背景には以下のような要因があります。
- 実習生数が伸びている要因
- 中国の経済成長により日本での実習を選ばなくなった
- ベトナム政府が外貨獲得のために海外就労を奨励
- 日本企業がベトナム人の勤勉さや適応力を評価
- 日本語学習環境や日本文化への親しみが深まった
とくに2017年の制度改正で技能実習の対象職種が拡大され、受け入れ人数が増加したことも、ベトナム人実習生が増えた一因となっています。
親日・勤勉・器用|ベトナム人の国民性と適性
ベトナム人の国民性は、日本企業との相性が良いとされています。
- ベトナム人の国民性
- 親日的:日本のアニメや文化、日本企業への信頼感が強く、好意的な印象を持つ若者が多い
- 勤勉でまじめ:責任感があり、与えられた業務を丁寧にこなす姿勢
- 器用さ:縫製や細かな作業を得意とし、製造業や農業、介護などでも即戦力に
また、家族思いで仕送りを重視する文化もあり、「働くこと」への意欲が高い点も特徴的です。こうした背景から、多くの企業がベトナム人を積極的に採用しています。
技能実習制度におけるベトナムの存在感
技能実習制度全体で見ても、ベトナムは送り出し国No.1の地位を長く維持しています。これは、ベトナム国内に多数の送り出し機関が整備されており、日本語教育やビザ手続きなどの体制が整っていることにもよります。
加えて、ベトナム人技能実習生は、比較的若年層が多く、定着率が高い傾向にあります。実習制度における彼らの存在感は年々高まっており、多くの企業にとって「採用の第一候補」として認識されています。
しかし近年では、経済成長や他国への就労機会の増加などにより、以前のような大量採用が難しくなってきた背景もあります。それらの変化については、次のセクションで詳しく見ていきます。
ベトナム人技能実習生の現状と変化

かつては日本での就労先として非常に人気だったベトナムの技能実習生ですが、近年ではその状況に変化が見られるようになっています。経済的な成長、就業先の多様化、日本側の制度課題など、実習生を取り巻く環境が大きく動いています。
経済発展と都市部の就職増加で応募減少
ベトナムは近年、著しい経済成長を遂げています。都市部では製造業やIT業などの雇用機会が増加し、若者が国内で働く選択肢を得られるようになりました。その結果、日本で技能実習に参加する動機が弱まり、都市部の若者を中心に応募が減少しています。
加えて、大学進学率の向上や、都市部での最低賃金の上昇も、若年層の進路選択に影響を与えています。以前のように「とにかく出稼ぎに出たい」という志向だけではなく、「国内でキャリアを積む」ことも現実的な選択肢になりつつあるのです。
円安・費用負担・制度の課題が希望者減少に拍車
さらに、円安の進行により、日本で稼いだ賃金の換算価値が減少している点も大きな要因です。送金目的で来日する技能実習生にとって、為替の影響は大きく、「思ったほど稼げない」という声も増えています。
加えて、ベトナム国内では送出しにかかる手数料や仲介費用が高額であることが問題視されており、来日前に数十万円の借金を背負って来日するケースも。制度的な不備や過度な費用負担は、実習生のモチベーション低下や途中帰国・失踪につながるリスク要因にもなっています。
近年は回復傾向|現地情勢と今後の見通し
一方で、2023年頃からは実習希望者数の回復傾向も見られています。背景には、ベトナム国内の企業活動の停滞や失業率の上昇、そして欧州での就労チャンス減少などが影響しています。
また、ベトナム政府による海外労働者保護の新法が施行され、仲介費用の上限が設けられたことで、来日前の負担が軽減されつつあります。このような制度整備と社会状況の変化により、再び日本への渡航を希望する若者が増えているという声もあります。
とはいえ、将来的にはさらに競争が激しくなることが予想されます。ベトナム以外の国からの人材確保も視野に入れた人材戦略が求められる時期に差し掛かっているといえるでしょう。
ベトナム人技能実習生の特徴と雇用時のポイント

技能実習生の採用・受け入れにあたっては、国籍によって性格傾向や価値観、言葉の壁などに違いがあります。特にベトナム人技能実習生の場合、その国民性や学習傾向を理解しておくことで、職場への定着や活躍につなげやすくなります。
性格傾向|素直でまじめだがプライドが高い
ベトナム人の多くは、素直でまじめ、協調性が高いという傾向があります。与えられた仕事を責任感を持ってこなし、人との関係を大切にするため、日本の職場にも比較的なじみやすいです。
一方で、プライドが高く、人前で注意されることを強く嫌うという国民性もあります。そのため、叱責する場合は別室で丁寧に話すなどの配慮あるコミュニケーションが求められます。論理的に物事を考える傾向もあるため、「なぜこのやり方なのか」を説明する姿勢が大切です。
日本語学習は入国前後で差が大きい
ベトナムでは送り出し機関で来日前に日本語を学びますが、教育の質や本人の学習姿勢によって大きなバラつきがあります。多くの実習生は「N4レベル」程度の日本語力で来日しますが、実際の職場では通じにくいケースも。
また、ベトナム語はアルファベットを使う言語のため、漢字やカタカナへのなじみが薄く、読み書きには苦労する人も多いです。入国後の日本語研修や、OJTでの語彙・言い回しの習得支援が、業務の理解度を左右します。
定着・活躍のために企業側が工夫すべきこと
ベトナム人技能実習生が定着し、活躍してもらうためには、企業側のサポート体制が欠かせません。
- 定着・活躍のために企業側が工夫すべきこと
- わかりやすい指示(ジェスチャーや図を使う)
- ベトナム語のマニュアルやサポートスタッフの配置
- 家族的な雰囲気の職場づくり(誕生日会や交流イベント)
- 評価制度の明示と小さな成果でも「褒める」姿勢
ベトナム人は承認欲求が強く、褒められるとモチベーションが上がる傾向にあります。信頼関係を築くことで、仕事に対してもより積極的に取り組んでくれるようになります。
採用・定着の難しさ|技能実習制度の限界

ベトナム人技能実習生は、まじめで働き者という評価が高い一方で、採用後の定着や戦力化には課題もあります。その背景には、制度そのものが抱える構造的な問題も少なくありません。
技能実習の本質は「人材育成」|雇用制度ではない
技能実習制度は本来、発展途上国への「技術移転」を目的とした国際貢献制度であり、労働力不足を補うための雇用制度ではありません。
そのため、制度上も「職場の即戦力になること」や「長期雇用」は想定されていません。あくまで“実習”という名目での受け入れであるため、教育・育成にかかる工数が多く、企業側が期待するような成果が得られないこともあります。
転職不可・受入制限など制度上の制約
技能実習制度では、原則として転職(転籍)ができないことになっています。配属後に職場が合わなくても他の会社に移ることができないため、実習生にとってはリスクの高い仕組みともいえます。
また、受け入れ人数は事業所の規模によって上限が決まっており、一定の書類や監理体制の整備も必要です。手続きも煩雑で、初めて導入する企業にとってはハードルが高く感じられることもあるでしょう。
失踪リスクや情報格差によるミスマッチ
近年では、ベトナム人技能実習生の失踪が問題視されています。その背景には、以下のような要因が挙げられます。
- ベトナム人技能実習生の失踪の理由
- 来日前に高額な手数料を負担しており、期待に見合う収入が得られなかった
- 実際の労働条件と聞いていた内容が異なる
- 日本語が通じず、職場で孤立してしまう
- ブローカーや仲介業者による誤情報
こうした情報格差や期待とのギャップが、不満や不信感につながり、最悪の場合は失踪という事態を招いてしまうこともあります。
人手不足解消には“特定技能”という選択肢も

技能実習制度では「育成」が前提であるため、即戦力としての活用や長期雇用には限界があります。本格的な人手不足対策として、いま注目を集めているのが「特定技能」という在留資格です。
特定技能とは?|制度概要と対象分野
特定技能制度は2019年に新設された在留資格で、人手不足が深刻な16分野(介護・外食・建設・製造業など)での外国人材の就労を認めています。
技能実習とは異なり、目的はあくまで「即戦力の確保」。試験に合格した外国人材が、日本で最大5年間(特定技能1号)働ける制度です。
さらに一部分野では、家族の帯同や永続的な就労が可能な「特定技能2号」への移行も認められています。
特定技能なら即戦力人材を長期雇用できる
特定技能の大きなメリットは、日本語力・技能水準ともに一定以上の水準が証明されていることです。
たとえば、ベトナム人の場合も下記の条件を満たしているため、初日から一定レベルの業務が可能な人材も多くいます。
- 条件
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 技能試験に合格
さらに転職(同業種内)も可能なため、よりマッチした職場を選ぶことができる仕組みになっています。企業側にとっても、採用後のミスマッチを減らすことが可能です。
ベトナム人との相性も◎|採用しやすさの理由
実際に特定技能の取得者にはベトナム人が多く、国内の登録支援機関や送り出し機関もベトナムに強いネットワークを持つところが増えています。
さらにベトナムでは、日本語教育や技能試験対策に特化した教育機関も増えており、「最初から特定技能を目指す」という層も増加中です。
そのため、採用のしやすさ・定着のしやすさという点でも、特定技能は非常に現実的な選択肢といえるでしょう。

技能実習と特定技能の違いまとめ(比較表あり)
ここまでご紹介したように、「技能実習」と「特定技能」は制度の目的や就労の条件、企業側のメリットなどが大きく異なります。採用方針を検討する際は、両者の違いを正しく理解しておくことが重要です。
以下に、主な違いをわかりやすく比較表でまとめました。
項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
---|---|---|
制度の目的 | 開発途上国への技能移転(人材育成) | 日本国内の人手不足解消(即戦力の確保) |
在留期間 | 原則3年(条件により最大5年) | 特定技能1号:最長5年特定技能2号:無期限(更新制) |
対象職種 | 約80職種(職種限定) | 16分野(介護・外食・製造・建設・農業など) |
日本語力の目安 | N4程度(初級) | N4以上が必須(介護などはN3相当) |
技能試験の有無 | 原則なし(送り出し機関が教育) | 原則あり(日本での技能評価試験に合格が必要) |
受け入れ企業の教育負担 | 高い(基礎から指導が必要) | 低い(即戦力としての活躍を想定) |
転職の可否 | 原則不可(企業が変わると実習継続が困難) | 一定条件下で可能(同業種内の転職が認められる) |
家族帯同 | 不可 | 特定技能2号で可能(1号は不可) |
人材の特徴 | 若く素直だが実務経験は乏しい | 日本語+業務スキルありの即戦力人材 |
ポイントは、技能実習が「育成型」、特定技能は「実務型」という点です。
特定技能であれば、採用直後から一定レベルで業務を任せられるうえ、より柔軟に就労・転職が可能となるため、「人手不足を本格的に解決したい企業」には特におすすめの制度です。
まとめ|ベトナム人材の活用は“制度選び”がカギ
日本の外国人雇用の中でも、ベトナム人技能実習生は長年にわたり重要な役割を果たしてきました。親日で勤勉、器用な国民性は多くの企業から高く評価されています。
しかし、ベトナム国内の経済成長や就労環境の変化、円安の影響などにより、従来のような「実習生ありき」の採用は難しくなりつつあります。制度の限界や失踪リスクも見過ごせません。
そうした中、より現実的な選択肢として注目されているのが「特定技能」です。一定のスキルと日本語力を備えた人材を、即戦力として長期的に雇用できる制度として、導入する企業が急増しています。
今後ベトナム人材を活用していく上で大切なのは、「技能実習」と「特定技能」の違いを理解し、自社に合った制度を見極めること。
安定した雇用と生産性の向上を実現するためにも、まずは特定技能の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
キャリアリンクファクトリーでは、特定技能制度に精通した専門スタッフが、人材紹介からビザ申請、定着支援までワンストップでサポートいたします。
「特定技能を用いたベトナム人材を活用したい」「制度の違いをもっと詳しく知りたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
