安全衛生推進者とは?|選任義務・役割・衛生推進者との違いをわかりやすく解説

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公開日:25.07.11/更新日25.07.11
安全衛生推進者とは?|選任義務・役割・衛生推進者との違いをわかりやすく解説

突然「安全衛生推進者に選ばれました」と言われて、戸惑っていませんか?

「何をする人なの?」「資格がいるの?」「選任しないとどうなるの?」

多くの方が最初は同じような疑問や不安を抱えます。

安全衛生推進者は、職場の安全と健康を守るうえで大切な役割を担う存在です。

とはいえ、難しい法律の文言や制度を理解しきれず、曖昧なまま業務を進めているケースも少なくありません。

この記事では、安全衛生推進者の定義・業務内容・選任条件・衛生推進者との違いをわかりやすく整理しています。

さらに、現場での具体的な取り組み事例や、実効性ある体制づくりのポイントもご紹介。

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安全衛生推進者とは?基本的な定義と目的

安全衛生推進者とは?基本的な定義と目的

「安全衛生推進者」とは、労働者が安心・安全に働ける環境を整えるために、事業場内の安全衛生活動を支える役割を担う担当者です。

特に、常時10人以上50人未満の労働者を使用する一定の業種の事業場において、労働安全衛生法に基づき選任が義務付けられています。

労働安全衛生法における位置づけ

安全衛生推進者は、労働安全衛生法第12条の2に規定された制度です。

従業員数が50人以上の事業場では「安全管理者」や「衛生管理者」の選任が義務付けられていますが、それ未満の小規模事業場においても、一定のリスクが存在する業種では、安全衛生推進者の選任が求められます。

この制度は、規模の大小にかかわらず、すべての職場における労働災害の予防と従業員の健康確保を目的としています。

誰が、いつ、なぜ選任されるのか

対象となる事業場では、従業員数が10人を超えた日から14日以内に選任する必要があります。

また、選任後は、氏名の掲示などを通じて職場内での周知が義務付けられており、労働者がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。

この制度が設けられている背景には、労働災害のリスクを未然に防ぎ、法令遵守と現場対応を両立する体制を整えることが求められているからです。

衛生推進者との違い(業種による違い)

似た名称の「衛生推進者」との違いは、選任対象の業種と担当する業務範囲にあります。

  • 「安全衛生推進者」と「衛生推進者」の違い
  • 安全衛生推進者:製造業、建設業、電気業などの危険性の高い業種で必要。
  • 衛生推進者:上記以外の比較的リスクが低い業種(飲食、保育、福祉など)で必要。

また、安全衛生推進者は安全と衛生の両方の分野を担当する一方、衛生推進者は衛生面のみが職務範囲です。

自社がどちらに該当するかを正しく見極め、適切な人材を選任することが重要です。

安全衛生推進者の主な職務内容とは

安全衛生推進者の主な職務内容とは

安全衛生推進者は、現場のリスク低減と従業員の健康確保を両立するため、安全・衛生の両分野にまたがる幅広い業務を担います。

その活動は、日々の点検や教育だけでなく、災害発生時の対応や組織全体への啓発まで多岐にわたります。

安全と衛生の両面に関わる業務とは

安全衛生推進者の最大の特徴は、「安全」と「衛生」の両領域を一手に担うという点です。

たとえば、作業中の転倒・感電・巻き込まれなどの事故を防ぐための管理と、作業環境の清潔さや健康診断管理などの衛生管理を同時に実施します。

現場に潜む「見えにくいリスク」を把握し、未然に防ぐことがこの職務の核心です。

教育・訓練の実施

事故や健康被害を防ぐには、従業員一人ひとりの意識と行動の改善が欠かせません。

安全衛生推進者は、「転倒防止」「巻き込まれ防止」「衛生管理」などの基礎的教育を定期的に実施し、新人研修や部署異動時にも対応します。

教育内容の充実は、現場の安全意識向上と労働災害の予防に直結します。

設備・作業環境の点検と改善

設備の故障や不備が事故の原因になることも少なくありません。

安全衛生推進者は、機械設備・作業導線・照明・換気状況などを点検し、異常があればすみやかに改善を提案・実行します。

また、安全装置の作動確認や保護具の使用状況なども対象に含まれます。

健康診断と職場の健康増進対策

健康診断の実施計画や記録管理、再検査の案内などを担当し、労働者の健康状態を継続的に把握します。

さらに、ストレスチェックやメンタルヘルス対策の企画・推進も含めて、職場全体の健康意識を高める役割も担います。

産業医や保健スタッフとの連携も重要な実務の一つです。

労働災害時の原因調査と再発防止策

万が一事故が起きた場合、安全衛生推進者はその原因を特定し、再発防止に向けた対策を立案・実施します。

ヒヤリ・ハットの報告収集や作業手順書の見直し、改善策の社内周知など、PDCAを回しながら職場改善を継続していくことが求められます。

安全衛生推進者の選任が必要な条件

安全衛生推進者の選任が必要な条件

安全衛生推進者は、すべての事業場に必要なわけではありません。

事業場の従業員数と業種の組み合わせによって、選任の必要性が変わります。

ここでは、選任が必要なケース、選任期限、違反時のリスクまでを整理して解説します。

事業場規模と対象業種

安全衛生推進者が必要となるのは、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で、かつ労働災害リスクの高い特定業種に該当する場合です。

以下に、業種ごとの選任義務をまとめた表をご紹介します。

従業員数(事業場単位)該当する業種必要な推進者
50人以上すべての業種安全管理者・衛生管理者
10〜49人危険性の高い業種(下記参照)安全衛生推進者
10〜49人上記以外の業種衛生推進者
1〜9人すべての業種推進者の選任不要

▼安全衛生推進者の対象業種(一部抜粋)

建設業、製造業、電気業、運送業、清掃業、ガス業、水道業、通信業、卸売業、燃料小売業、自動車整備業、機械修理業 など

選任までの期限と周知義務

安全衛生推進者は、従業員数が10人を超えた日から14日以内に選任する必要があります。

選任した際には、その氏名を作業場内の見やすい場所に掲示し、全従業員に周知する義務があります。

なお、労働基準監督署への報告義務はありませんが、内部体制として明確にし、履歴や記録を残しておくことが望ましいとされています。

選任しなかった場合のリスクと罰則

安全衛生推進者の選任義務があるにもかかわらず未対応のまま放置していた場合、以下のようなリスクが発生します。

  • リスクと罰則
  • 法令違反による行政指導や是正勧告
  • 労働災害発生時に「安全配慮義務違反」として企業責任が問われる
  • 安全管理体制の不備として社会的信用を損なう

また、重大な災害が発生した場合には、損害賠償請求や労働局からの厳重な指導・罰則対象となることもあります。

企業イメージの低下や採用への悪影響にもつながるため、選任義務の有無を正しく把握し、早めの体制構築を行うことが重要です。

安全衛生推進者の資格要件と講習

安全衛生推進者の資格要件と講習

安全衛生推進者の選任には、一定の実務経験や資格、もしくは講習の修了が求められます。

ここでは、どのような人が選任対象となるのか、必要な講習や衛生推進者との違いについて詳しく解説します。

実務経験による選任条件

労働安全衛生法に基づき、安全衛生推進者は以下のいずれかの実務経験または資格を持つ者から選任する必要があります。

  • 選任条件
  • 大学または高等専門学校卒業後、1年以上安全衛生業務に従事した者
  • 高等学校または中等教育学校卒業後、3年以上安全衛生業務に従事した者
  • 学歴に関係なく、5年以上安全衛生業務に従事した者

いずれも「安全衛生」に関する経験が求められるため、単なる現場経験のみでは不足する場合があります。

講習を受ければ誰でもなれる?

上記のような要件を満たさない場合でも、厚生労働省が認定する講習(安全衛生推進者養成講習)を修了すれば選任が可能です。

この講習は、学歴や職歴に関係なく誰でも受講できるため、社内で候補者がいない場合でも比較的柔軟に対応できます。

また、講習を受けたという事実は法的にも選任条件を満たす証拠となります。

養成講習の内容と実施団体

安全衛生推進者養成講習では、安全管理・衛生管理に必要な基礎知識を体系的に学びます。

主な内容は以下の通りです。

  • 安全衛生推進者養成講習の内容
  • 労働安全衛生法の基礎知識
  • 安全衛生教育の方法
  • 作業環境の点検・改善
  • 労働災害の防止策
  • 健康診断・ストレスチェックの実務 など

講習は1日または2日間で完結することが多く、以下のような団体が実施しています。

  • 団体一覧
  • 公益社団法人 労務管理教育センター
  • 各都道府県の労働基準協会
  • 一般社団法人 安全衛生マネジメント協会 など

講習は対面だけでなく、近年ではWeb講習にも対応しており、受講のしやすさも向上しています。

衛生推進者との資格要件の違い

衛生推進者も同様に、実務経験や講習受講が求められますが、対象となる業務が「衛生」に限られている点が大きな違いです。

具体的には以下のように整理できます。

推進者の種類対象業種担当範囲選任要件
安全衛生推進者危険性の高い業種安全+衛生実務経験 or 講習修了
衛生推進者上記以外の業種衛生のみ衛生分野の経験 or 講習修了

安全衛生推進者は、衛生推進者よりも広範な知識と対応力が求められる職種であるため、選任後も継続的な学びが重要となります。

キャリアリンクファクトリーの安全衛生推進課による4つの取り組み

キャリアリンクファクトリーの安全衛生推進課による4つの取り組み

安全衛生推進者が現場で実効性を持って機能するためには、制度を理解するだけでなく、組織としての支援体制が整っていることが重要です。

キャリアリンクファクトリーでは、安全衛生推進課が中心となって、全国の現場に対して以下の4つの取り組みを実施しています。

コンプライアンス遵守

労働安全衛生法をはじめとする関連法令を正しく理解し、各種届出・報告の適正管理を徹底しています。

また、定期的な社内監査やチェックを通じて、法令違反のリスクを未然に防止。

推進者一人に負担が偏らないよう、組織全体でコンプライアンス体制を支える仕組みを構築しています。

現地での危機管理指導

全国の現場を定期的に巡回し、実際の作業環境や潜在的リスクを直接確認。

その場で危険箇所の特定や改善提案を行い、即時対応が必要な場合は、現場主導でのリスク低減策の実行をサポートします。

また、万が一の事態に備えた緊急時対応訓練の企画・実施も行っており、現場の危機対応力向上に貢献しています。

安全教育の実施

職場ごとの特性に応じた労災マニュアルや教育プログラムの作成を行い、現場での事故を未然に防止。

「転倒」「はさまれ」「巻き込まれ」など、基本的かつ発生頻度の高い事故類型を重点的に指導します。

これにより、従業員の安全意識と行動が根本から改善されることを目指しています。

迅速な報告対応と改善策の徹底

現場からの報告には、即時対応を基本方針とし、通常1か月以内を目安に関連書類を完了・整理。

情報共有には社内チャットやアプリを活用し、リアルタイムで対応状況を関係者全体に共有しています。

再発防止のための改善策についても、現場の声を反映した実行可能な対策を優先して実施しています。

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安全衛生推進者の配置で得られる企業メリット

安全衛生推進者の配置で得られる企業メリット

安全衛生推進者の配置は、法令遵守のためだけではありません。

実際には、労働災害のリスクを下げるだけでなく、企業全体の働きやすさや信頼性、ブランディングにも好影響を与える重要な取り組みです。

ここでは、企業にもたらす主な3つのメリットを紹介します。

労働災害の予防と信頼性向上

安全衛生推進者が職場の危険箇所を把握し、定期点検や改善提案を行うことで、労働災害の発生リスクを大幅に低減できます。

また、災害発生時には迅速な対応と再発防止策の実行により、従業員からの信頼も高まります。

「この会社はきちんと安全を考えている」というイメージは、顧客や取引先からの信頼向上にもつながり、事故による操業停止や損害賠償リスクの回避にも効果を発揮します。

従業員の定着とモチベーション向上

働く人にとって「安全で健康に働ける環境」が整っていることは、非常に重要な安心材料です。

定期的な健康診断や衛生教育の実施、ストレス対策などを通じて、従業員の心身の不安が軽減されることで、職場への満足度や定着率が向上します。

また、安全への取り組みが「大切にされている」という実感にもつながり、結果的にモチベーションやパフォーマンスの向上にも寄与します。

採用・企業ブランディングへの好影響

近年では、「安全・健康に配慮した職場環境」を重視する求職者も増えており、

安全衛生に力を入れている企業は、求人応募時の企業イメージや採用競争力でも優位になります。

さらに、外部評価として「ホワイト企業」や「健康経営」などのイメージが強まることで、企業ブランディングや長期的な人材確保の面でもプラスに働きます。

まとめ|「名ばかり担当」ではなく、実効力ある体制づくりを

安全衛生推進者は、単なる名義上のポジションではなく、従業員の命と健康、そして企業の信用を守る要の存在です。

特に10~49人規模の現場では、経営者と従業員の“中間”で動く実務者として、現場の声に耳を傾け、改善へつなげる架け橋となることが求められます。

しかしながら、「選任しただけ」「肩書きだけ」の状態では、制度が形骸化してしまい、事故や法令違反のリスクを高めかねません。

キャリアリンクファクトリーでは、そうした“名ばかり担当”にさせないために、現場密着型の支援体制と、継続的な教育・改善活動を行っています。

安全衛生推進者が自信をもって職務を遂行し、組織全体で安全文化を育てていけるよう、今後も取り組みを進化させていきます。

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