技能実習生の日本語レベルはどのくらい?受け入れ基準と“特定技能”という選択肢

外国人雇用
公開日:25.07.04/更新日25.07.04
技能実習生の日本語レベルはどのくらい?受け入れ基準と“特定技能”という選択肢

外国人技能実習生の受け入れを検討する際、最も多くの企業が直面するのが「日本語、ちゃんと通じるのか?」という不安です。

現場での指示が正しく伝わらなければ、思わぬミスやトラブルにつながることも。実際に受け入れてみて、「思っていたより日本語が通じなかった…」と悩む企業も少なくありません。

この記事では、技能実習生が来日時に持っている日本語レベルの目安や、現場で起きやすい言葉の壁、日本語教育の工夫と限界について詳しく解説します。さらに、「日本語力の高い即戦力を求めるなら特定技能という選択肢もある」という、今注目の制度についてもご紹介します。

「今の人手不足をどう補うか」「外国人材とどう向き合うべきか」に悩む方こそ、ぜひ最後までご覧ください。

※なお、技能実習制度は育成就労制度へと変更になります。施行される時期は2027年を目標としています。

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技能実習生の日本語レベルはどれくらい?

技能実習生の日本語レベルはどれくらい?

技能実習生を受け入れるにあたって、まず気になるのが「実際どの程度、日本語が通じるのか?」という点ではないでしょうか。

事前に語学研修を受けているとはいえ、来日直後の実習生がどこまで日本語を理解し、どんな業務に対応できるかは、業種や現場の状況によっても大きく変わります。

この章では、来日時の平均的な日本語レベルや、職種ごとに求められる語学力の違い、そして日本語能力試験(JLPT)の各レベルがどのような理解度を示しているのかを整理してご紹介します。

来日直後は「N4」レベルが一般的

多くの技能実習生は、母国の送り出し機関で日本語の基礎教育を受けたうえで来日します。その中で最も多いのが、日本語能力試験(JLPT)の「N4」レベルに相当する日本語力です。

N4レベルとは、「ゆっくりとした日常会話であれば理解できる」程度の能力を指します。基本的な挨拶や簡単な指示、「これはやりました」「ここです」などの短い返答は可能ですが、複雑な指示や業務上の会話にはまだ不安が残る段階です。

ただし、N4といっても実際の能力には個人差があります。教科書通りの丁寧語には対応できても、現場で飛び交う省略表現や方言、ラフな言い回しには戸惑うケースが多く見られます。

職種によっては「N4」では不十分な場合も

製造や農業など、ある程度作業がパターン化されている業種であれば、N4レベルでも徐々に慣れていくことが可能です。しかし、建設・介護・接客業など、安全性や対人対応が求められる業種では、N4では不十分とされることも少なくありません。

たとえば介護職では、相手の表情や状態を読み取りつつ、瞬時に判断・対応する場面が多く、日本語でのスムーズな意思疎通が欠かせません。このような現場では、最低でもN3レベル以上の語学力が求められることが一般的です。

日本語能力試験(JLPT)レベル別の理解度まとめ

レベル内容の目安現場対応力の目安
N1論説文やニュースも理解可能高度な対人業務、通訳も可能
N2新聞・雑誌の記事を理解専門的な職務での運用が可能
N3日常的な会話・読み書きができる接客・介護・現場でのやり取りがスムーズ
N4基本的な会話は理解可能単純作業は対応可、指示には工夫が必要
N5単語・挨拶・定型文を理解補助的な作業に限定される可能性あり

このように、「N4が多い」=「十分に通じる」ではないという点は、多くの企業が受け入れ前に理解しておくべきポイントです。

日本語レベルの低さで起きやすい現場トラブル

日本語レベルの低さで起きやすい現場トラブル

来日直後の技能実習生は、最低限の日本語能力を身につけているとはいえ、実際の現場では「想像以上に会話が通じない」と感じるケースも少なくありません。

特に、業務上の細かい指示や口頭でのやり取りが多い職場では、ちょっとした言葉のズレが大きなミスやトラブルにつながることもあります。

ここでは、日本語レベルの不足が引き起こす具体的な問題や、職場でよくある困りごとを見ていきましょう。

指示が伝わらず、ミスや危険につながる

技能実習生にとって、日本語での指示を正確に理解することは非常に大きなハードルです。

たとえば「これを先に片付けてから、あれを運んでおいて」など、複数の動作を含む指示や、曖昧な言い回しを理解するのはN4レベルでは難しい場合があります。

結果として、作業手順の誤りや確認不足によるトラブルが発生しやすくなります。特に建設現場や工場では、安全に直結する作業も多く、日本語の聞き間違いや解釈違いが事故の原因になるリスクも考慮が必要です。

職場で孤立しやすく、定着しないリスクも

言葉の壁は、仕事上の問題だけでなく、職場内での人間関係にも影響を及ぼします。

会話のテンポについていけなかったり、自分から話しかけることに不安を感じたりすると、実習生が周囲と距離を置いてしまいがちです。

特に休憩時間や日常のちょっとした雑談に参加できないと、「職場に馴染めていない」「一人で悩みを抱えてしまう」といった状況になりやすく、早期離職の原因になることもあります。

現場用語・方言・くだけた日本語に対応できない現実

教科書で学ぶ日本語と、実際の職場で使われる日本語は大きく異なります。

たとえば「やっといて」「しといて」「違うよ、それじゃない」など、口語的で省略された言い方や命令口調は、初学者には非常に難解です。

さらに地方の職場では方言やなまりが加わり、標準語では通じる内容も聞き取れないケースが多々あります。こうした「実務に特化した日本語力」は、短期間では身につきにくく、企業側の配慮も必要です。

日本語教育でサポートできること・限界があること

日本語教育でサポートできること・限界があること

日本語力の不足によるトラブルを防ぐために、多くの企業が「どうすれば日本語をもっと覚えてもらえるか」と工夫を凝らしています。

たしかに、職場でのサポートや学習機会の提供は、実習生の日本語力向上に大きく貢献します。

ただし、いくら教育環境を整えても「時間がかかる」「モチベーションの維持が難しい」など、現場には限界やハードルもあるのが実情です。

この章では、企業ができる取り組みと、それでも避けられない課題を整理します。

現場の協力や日本語学習支援は必須

日本語力向上のためにもっとも効果的なのは、実際の職場で日本人と関わる時間を増やすことです。

たとえば、先輩スタッフがやさしい言葉で声をかけたり、あいさつや雑談を積極的に交わしたりすることで、実習生が言葉に慣れるスピードは格段に上がります。

また、定期的に簡単なチェックテストや会話練習の時間を設けるなど、「学ぶ機会を職場に組み込む」ことで、自然と語彙や理解力が増していきます。

独学やアプリ・外部サービスの活用方法

最近では、スマートフォンを使った日本語学習アプリや、オンライン日本語教室など、実習生が自宅でも学べる教材やサービスも充実しています。

また、外国人技能実習機構(OTIT)が無料で提供している現場向け日本語教材など、公的リソースも活用価値があります。

ただし、これらのサービスも「継続して使う環境づくり」がなければ、十分な効果は得られません。職場からの紹介やサポートが、利用定着のカギとなります。

それでも「習得には時間がかかる」という現実

どれだけサポートをしても、日本語は世界的に見ても習得が難しい言語のひとつです。特に、敬語や文法の複雑さ、漢字の読み書きなどは、日本語を母国語としない実習生にとって大きな壁です。

さらに、実習生の多くは慣れない仕事と生活で日々疲れており、「学習に割く余力がない」「学ぶ意欲が続かない」といった問題も出てきます。

そのため、企業側としては「時間がかかるのが当たり前」という前提で、長期的に付き合う覚悟と、あたたかい支援の姿勢が必要です。

そもそも、なぜ日本語力がこんなに重要なのか?

そもそも、なぜ日本語力がこんなに重要なのか?

技能実習生を受け入れる現場では、つい「人手が足りないからとりあえず雇う」という考えになりがちです。

しかし、技能実習生の受け入れが本当に成功するかどうかは、「日本語でのやり取りがどこまで成り立つか」に大きく左右されます。

この章では、日本語力が不足していると具体的にどのような問題が起きるのか、逆にしっかり言葉が通じることでどんなメリットがあるのかを掘り下げていきます。

安全・品質・接客…言葉は業務の根幹

「言葉が通じないけれど、作業はできるから大丈夫」と思われるかもしれません。

しかし、たとえば製造現場での工程ミスや、建設現場での安全確認漏れ、介護現場での誤対応など、業務上のミスや事故の多くは“指示の誤解”から起こります。

また、飲食・小売・宿泊などの接客業では、お客様とのやり取りにも言葉が必要です。意思疎通が曖昧なままだと、企業の信用やサービス品質にも関わってきます。

つまり、日本語力は「付属スキル」ではなく、業務を支える土台と言っても過言ではありません。

「通じる」ではなく「使いこなせる」が理想

たしかに、N4レベルの実習生であっても「挨拶」や「単純な作業指示」にはある程度対応できます。

しかしそれは、あくまで「部分的に理解している」という状態であり、現場で求められるのはもっと深いレベルの理解です。

たとえば、「これ終わったら次の準備もしておいてね」「急ぎで対応してほしい」「相手が困っていたら声をかけて」など、状況を読み取って行動するには、言葉の微妙なニュアンスまで把握する力が必要です。

つまり、日本語はただ「通じればいい」ではなく、「自発的に使いこなせる」レベルまで引き上げることが、実習生本人の成長と現場の安定につながります。

人手不足の今、“特定技能”という選択肢も

人手不足の今、“特定技能”という選択肢も

ここまで、技能実習生の日本語レベルとその課題についてお伝えしてきました。

日本語教育を工夫して支援することで改善は可能ですが、どうしても「即戦力」としては時間がかかるという側面は否めません。

そこで、近年注目されているのが「特定技能」という在留資格です。

この制度を活用することで、日本語力と技能をあらかじめ備えた人材を受け入れることができ、人手不足に悩む企業にとっては強力な選択肢となり得ます。

特定技能とは?制度の概要と背景

特定技能とは、2019年に新設された在留資格で、一定の日本語能力と業務スキルを備えた外国人材が、労働者として日本国内で働くことを目的とした制度です。

人手不足が深刻な16業種(介護・外食・建設・農業・製造業など)が対象となっており、技能実習とは異なり、「労働力確保」が明確な目的です。

従来の技能実習制度が「人材育成」を目的としていたのに対し、特定技能は即戦力の外国人材を中長期的に受け入れることが可能です。

日本語力はN4以上(介護などはN3相当)+技能試験も

特定技能の在留資格を取得するには、日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格することが基本条件とされています(介護分野ではN3相当)。

さらに、各業種ごとに定められた技能試験にも合格する必要があります。

つまり、特定技能人材はすでに一定の日本語コミュニケーション能力と、実務に必要なスキルを兼ね備えているため、現場への適応が早く、業務も任せやすいという特徴があります。

技能実習生との最大の違いは“即戦力”と“最長5年の就労”

技能実習制度では、在留期間が原則3年(条件により最大5年)であり、かつ職種の幅が限定されているのに対し、特定技能1号では最長5年間の就労が可能です(特定技能2号ではさらに長期可)。

また、技能実習では一からの指導が必要なケースが多いのに対し、特定技能人材はすでに現場経験がある、あるいは即戦力としての能力を持っている人材が多いため、教育コストや労力の削減にもつながります。

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違いが一目でわかる!技能実習生と特定技能を比較表

ここまで読んで、「結局、技能実習と特定技能はどう違うの?」と感じた方も多いのではないでしょうか。

両制度には目的・対象人材・スキルレベル・在留期間など、いくつもの違いがあります。

ここでは、技能実習生と特定技能人材の違いを一覧表で整理しました。自社の状況に合った制度を選ぶ際の参考にしてください。

項目技能実習制度特定技能制度
制度の目的開発途上国への技能移転(人材育成)日本国内の人手不足解消(即戦力の確保)
在留期間原則3年(条件により最大5年)特定技能1号:最長5年特定技能2号:無期限(更新制)
対象職種約80職種(職種限定)16分野(介護・外食・製造・建設・農業など)
日本語力の目安N4程度(初級)N4以上が必須(介護などはN3相当)
技能試験の有無原則なし(送り出し機関が教育)原則あり(日本での技能評価試験に合格が必要)
受け入れ企業の教育負担高い(基礎から指導が必要)低い(即戦力としての活躍を想定)
転職の可否原則不可(企業が変わると実習継続が困難)一定条件下で可能(同業種内の転職が認められる)
家族帯同不可特定技能2号で可能(1号は不可)
人材の特徴若く素直だが実務経験は乏しい日本語+業務スキルありの即戦力人材

このように、両者は「育成型」か「即戦力型」かという根本的な考え方の違いがあります。

「今すぐ現場で使える人材が欲しい」「定着率を高めたい」という企業には、特定技能のほうが適しているケースも多いでしょう。

まとめ|実務対応力を求めるなら、特定技能も検討を

技能実習生の受け入れは、人手不足を補う手段として広く活用されていますが、その一方で「日本語が通じない」「指示がうまく伝わらない」といった課題に直面する企業も少なくありません。

現場でのコミュニケーションや安全管理を考えると、日本語力は業務の根幹を支える重要な要素であることがわかります。

もちろん、職場内での教育や支援によって実習生の日本語力は徐々に向上していきますが、一定の時間と労力が必要です。

そうした中で、日本語力と技能の両方を備えた即戦力を求める企業にとっては、「特定技能」という選択肢が非常に有効です。

制度の違いをしっかり理解し、自社の現場にとって「何を優先すべきか」を見極めることで、より良い外国人材活用につながります。

今後の採用戦略を考えるうえで、技能実習だけでなく特定技能の活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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「特定技能を人材を活用したい」「制度の違いをもっと詳しく知りたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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