食品製造業は深刻な人手不足|データから見る現状と4つの解決法を紹介
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食品製造業は、私たちの生活に欠かせない重要な産業です。しかしこの業界は今、深刻な人手不足に悩まされています。食品製造業の人手不足が続けば、私たちの食生活や健康はもちろん、日本の経済や安全保障にも大きな打撃を与える可能性があります。では、なぜ食品製造業が人手不足になっているのでしょうか。
この記事では、食品製造業が人手不足に陥っている原因や背景、解決方法を紹介いたします。問題を理解し対応することで、リスクが重大化する前の早期解決に繋がります。
目次
食品製造業が人手不足に陥っている現状と根源となる3つの要素

農林水産省資料によると、飲食料品製造業分野の有効求人倍率は、令和5年9月時点で3.15倍と非常に高い水準となっております。
厚生労働省発表の全産業の有効求人倍率は同期間で1.31倍、飲食料品製造業分野に属する食品製造業は他産業と比較しても有効求人倍率が高く、人手不足が深刻であることがわかります。
※有効求人倍率:求職者1人に対して何件の求人があるかを示す数値で、就職のしやすさの目安になる指標、数値が高いほど求人が難しい
食品製造業が人手不足に陥っている背景には、社会全体に関わる3つの要素が考えられます。それぞれの要素がどのように食品製造業に影響を与えているのかを詳しく見ていきましょう。
高齢化や少子化による労働力人口の減少
日本は急速なペースで少子高齢化が進んでいます。日本の労働力人口はピークアウトしており、今後ますます減少していくと予測されています。実際に製造業の就業者数は、約20年間で157万人減少しています。製造業の中でも食品製造業は求職者の就職意欲が低く、人材確保が困難な傾向にあります。
このように食品製造業は、高齢化や少子化による労働力不足の影響を受けやすい業界なのです。
コロナ禍による外国人労働者の減少も乗り越え、増加傾向にあるが厳しい状況
コロナ禍により、入国制限や帰国強制などの影響で、日本で働く外国人労働者が大幅に減少しました。2020年10月末時点での外国人労働者数は約182万人でしたが、2024年10月末時点では外国人労働者は約230万人と増加しております。
外国人労働者が増加しているにもかかわらず、人手不足が続く要因としては、他産業への人材が流れている、労働条件の厳しさと敬遠されやすい環境、定着率の低さなどの様々な要因が考えられます。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
食品製造業へのネガティブイメージ
製造業は「きつい」「汚い」「危険」といった、いわゆる3Kのネガティブなイメージを抱かれており、特に若者就業者から敬遠されやすい傾向にあります。
また、人手不足が続いている食品製造業は、過重労働や休暇取得の減少など、ネガティブなイメージを抱いている方が多い傾向にあります。このようなネガティブイメージが人手不足を加速させ、更なる人手不足を起こす問題の根源となっています。
人手不足が食品製造業に与える重大な影響

食品製造業の人手不足は、食品生産量や品質をもたらす重大なリスクとなります。問題が大きくなると、その影響は企業の存続危機へと繋がりかねません。こちらでは、人手不足が食品製造業に与える重大な影響とリスクをそれぞれ解説いたします。
食品生産量の低下
食品製造業は労働集約的な産業であることが多く、十分な労働力が確保できない場合、生産量が低下するリスクが高まります。慢性化していくと市場への供給量の減少をもたらし、消費者の需要を満たせなくなる可能性があります。食品は生活の根幹となる生活必需品で、高いレベルの安定供給を求められる産業です。食品製造業の人材不足は様々な分野に波及する重大な問題といえます。
食品生産の品質が低下
食品製造業界が人手不足に陥ることで起こりえるリスクとして、品質管理や衛生管理に影響を及ぼすといった事態が挙げられます。
作業負荷が高くなると、ミスや不良品が発生しやすくなります。人手不足の状態が慢性化していくと、技術やノウハウの伝承が困難になり、更なる負のサイクルに陥る原因となります。
さらに衛生面での不備があると、食品安全に関する法令違反や消費者からのクレームが発生し、事業所の信頼性やブランドイメージを損なうだけでなく、最悪の場合は事業停止や撤退に追い込まれるリスクがあります。
人手不足の影響により事業縮小・倒産する事例も
人手不足が慢性化すると、納期遅れや品質クレームが多発し、顧客満足度の低下に繋がります。顧客満足度の低下は、売上や利益の減少に直結し、企業経営に悪影響を及ぼします。
また、人手不足の影響は人件費の増加に直結します。最低賃金は年々上昇し、令和5年度の最低賃金(全国加重平均額)は1,004円になっています。
人手不足の影響により売上・利益が減少することで人件費に資金を使えなくなり、さらなる人手不足を引き起こすといった負のスパイラルに陥る事例も発生します。そうなることで、食品製造現場を維持できなくなり、事業規模の縮小や倒産を迫られるケースも起こり得るのです。
食品製造業分野の人手不足が企業に与える影響
食品製造業では、少子高齢化や離職率の高さなどの要因により、慢性的な人手不足が続いています。この状況は単に生産現場の稼働に影響するだけでなく、企業の収益やブランド価値、長期的な経営戦略にも大きなダメージを与えます。
特に製造現場の労働環境が悪化すると、さらに人材が流出し、採用コストの増加や機会損失といった深刻な問題を引き起こす悪循環に陥る危険があります。ここでは、人手不足が企業にもたらす具体的な影響を見ていきます。
離職が離職を招く
人手不足が常態化すると、一人ひとりの負担が増大し、その結果として従業員の疲労やストレスが蓄積します。特に繁忙期や突発的な欠員が発生した場合、残された従業員が長時間労働や休日出勤を強いられるケースも少なくありません。
こうした環境はモチベーションの低下を招き、さらに離職者を増やす「悪循環」を生み出します。結果として、採用してもすぐ辞めてしまう状況が続き、慢性的な人手不足から抜け出せなくなるリスクがあります。
需要に対応しきれず、機会損失が発生
生産ラインの稼働率は、十分な人員が確保されてこそ最大化されます。しかし、人手不足の状態では製造スピードが落ち、納期遅延や注文キャンセルといった機会損失につながります。
特に食品業界は消費期限が短い商品も多く、タイムリーな供給が求められるため、人員不足による遅延は取引先との信頼関係を損なう大きな要因となります。結果的に、売上の減少だけでなく、ブランド価値の低下にも直結します。
早期離職が増加し、採用コスト増加
人手不足を補うために採用を急ぐと、適性やスキルの見極めが不十分なまま採用してしまうことがあります。その結果、早期離職が増え、再び募集・面接・教育といったプロセスを繰り返すことになり、採用コストが膨らみます。
特に食品製造業は衛生管理や工程の正確性が求められるため、教育コストも高く、一度離職されると企業の負担は非常に大きくなります。
食品製造業分野の人手不足が社員に与える影響
企業にとっての人手不足は経営課題ですが、その影響を最も直接的に受けるのは現場で働く社員です。人員が不足することで一人当たりの業務量が増え、長時間労働や業務負担の偏りが常態化するケースも少なくありません。
こうした状況は社員の心身の疲労を蓄積させ、職場環境やモチベーションの低下につながります。結果的に、さらなる離職や生産性の低下を招く可能性が高く、現場の持続的な運営が難しくなります。ここでは、人手不足が社員にもたらす具体的な影響を整理します。
時間外労働の増加
人手が不足すると、既存の社員が不足分を補うために残業や休日出勤を余儀なくされます。特に食品製造業では、需要の変動に合わせて柔軟なシフト対応が求められるため、繁忙期には長時間労働が常態化する傾向があります。これが続くと、心身の疲労や健康リスクが高まり、社員の離職意向を強める要因となります。
職場環境の悪化
人員不足により現場が常に慌ただしい状態になると、社員間のコミュニケーションや協力体制が崩れやすくなります。指示や確認が不十分なまま業務が進み、作業ミスや品質トラブルの発生リスクが増加します。こうした環境は社員の心理的負担を高めるだけでなく、職場全体の士気低下にもつながります。
日々の業務をこなすことで手一杯になる
人手不足の現場では、社員が「今日の作業を終わらせること」に精一杯となり、中長期的な改善活動や新しい取り組みに時間を割く余裕がなくなります。
その結果、生産効率の向上や技術習得の機会が失われ、現場の成長が停滞してしまいます。さらに、この状態が続くと、将来的な人材育成にも悪影響を及ぼします。
食品製造業が取り組むべき4つの人手不足問題解決法

食品製造業が陥る人手不足の問題は、決して無視できない重大な課題です。しかし、様々な方法で人手不足問題に対処し解決することができます。食品製造業が取り組むべき人手不足問題の解決法を紹介いたします。
働き方改革や労働環境改善
人手不足を解決するには、 働き方や労働環境改善を行い、食品製造業へのマイナスイメージを払拭することが重要です。
無理な過重労働を行っている職場は求職者に敬遠されやすく、採用辞退が難しくなる傾向にあります。採用ができても労働者が定着せず、教育してきた従業員の早期退職に繋がりかねません。
結果として求人募集の費用や教育費が増加し、経営を圧迫していきます。負のスパイラルから抜け出すためには、人手不足の早期解消が求められるのです。人が採用できない、入社してもすぐに退職してしまうといった場合には、求人市場を意識しながら労働時間、休暇取得、賃金などの採用・雇用に関わる項目の見直しが必要です。
また、3K(「きつい」「汚い」「危険」)に該当する作業は、ロボットやAIなどの先進的な技術を活用し、自動化の推進が効果的です。自動化を進めることで、人手不足の解消にも繋がります。
こういった労働環境改善の取り組みは、雇用の促進以外にも従業員のモチベーション向上となり、定着率やパフォーマンスの上昇も期待できます。

高齢者の働ける環境づくりを行う
高齢者の受け入れは人手不足の解消に効果的です。製造業における34歳以下の若年就業者数は、約20年間で121万人減少しているのに対し、65歳以上の高齢就業者数は33万人増加しています。
労働力としても期待できる他、高齢者の活用により人材教育を進めようと創意工夫している事業所も多いようです。厚生労働省の「2022年版ものづくり白書」で公表されたデータによると、技能継承の取組みとして「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」と回答した事業所が59.5%となっております。
参考:2022年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第 8条に基づく年次報告)
外国人の受け入れを進める
外国人の受け入れは人手不足の解消に効果的です。コロナ禍による入国制限や帰国強制の影響で一時減少したものの、現在外国人労働者数は回復傾向です。
令和6年10月末時点で230万人と外国人労働者の届出が義務化された平成19年以降過去最高を更新しております。
その背景には外国人労働者受け入れ制度の拡大を目的に導入された、特定技能という在留資格が影響していると考えられます。特定技能とは、国内人材の確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的に、2019年に創設された在留資格です。
特定技能の在留資格が導入されたことで、専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者の全体数は、前年対比21.7%と最も増加しているのです。食品製造業は特定技能の受け入れ条件に含まれており、特に恩恵を受けられる産業分野です。
受け入れ可能な人材の層を増やすことで、人手不足の解消が期待できます。

雇用・採用のアウトソーシング化を検討する
自社で求人市場の調査や採用活動の強化が難しい場合は、雇用・採用をアウトソーシング化することで改善が期待できます。特に人材派遣では、採用から雇用までを派遣会社が行い、自社で採用や雇用を行わなくて良いので、手間やコストを大幅に削減し、職場の労働環境改善や教育環境の構築に注力できます。
日本人材派遣協会のデータによれば、2012年には約97万人だった派遣社員の人数は、2022年には約142万人にまで増加しました。必要なスキルや知識を持った人材の提供や、繁忙期のスポット対応も行っており、必要な人材の確保や柔軟な人員調整が可能です。
参考:日本人材派遣協会データ
人材派遣以外にも、採用を外注化できる人材紹介サービスや、業務の一部を外注化できる請負サービスもありますので、自職場のニーズに合わせて選択すると良いでしょう。

まとめ
食品製造業の人手不足の実態や問題点に対し、解決方法を紹介してきました。人手不足が続くと、様々な問題が発生するため、本記事に記載した解決方法を参考に早期解決が必要です。
人々の生活に欠かせない食品製造業は、安定した生産体制や高いレベルの品質が求められるので、自社で採用・雇用を賄うことが難しい場合、外注化の検討が有効的です。
人材会社の中には、人材派遣・請負・人材紹介・外国人雇用を提案出来る企業もあり、依頼・相談することで早期解決が期待できますので、まずは相談してみることをおすすめします。
キャリアリンクファクトリーでは、製造業専門の人材派遣会社ですので、もし人材不足でお困りでしたら、お気軽にお問合せください。迅速な対応と人材紹介後も丁寧なフォローもいたします。
