技能実習と育成就労の違いとは?|制度の背景・変更点・企業の対応までやさしく解説
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近年、外国人材の受け入れに取り組む企業が増えるなか、「技能実習制度が廃止されて新しい制度になるらしい」「育成就労って聞いたことあるけど、よくわからない」といった声も多く聞かれます。
2024年に創設が決まった「育成就労制度」は、現行の技能実習制度の課題を見直し、「人材の育成」と「労働力の確保」を両立させる新たな制度として注目を集めています。
2027年の施行を見据えて、企業にも準備が求められるタイミングが近づいています。
本記事では、技能実習制度と育成就労制度の違いや、制度変更の背景、企業が今から備えるべきことをわかりやすく解説。
制度の概要を把握し、時代に合った外国人材活用の第一歩として、ぜひご活用ください。
目次
育成就労とは?新制度の概要をわかりやすく解説
ここでは、育成就労制度について概要をわかりやすく解説いたします。
育成就労の定義と目的
「育成就労」は、これまでの技能実習制度に代わる新しい外国人材の受け入れ制度です。
2024年3月に創設が決定され、2027年の施行が予定されています。
この制度の目的は、単なる「国際貢献」ではなく、「人材確保」と「人材育成」との両立です。
従来の制度では、実習生が実質的に労働力として扱われる実態がありましたが、育成就労では外国人が日本で長期的に成長できる環境を整えることが重要視されています。
外国人本人のキャリアアップや人権保護に配慮しながら、企業にとっても戦力となる人材を育てていく制度です。
技能実習制度からの主な変更点
育成就労制度は、従来の技能実習制度と比べて以下の点が大きく変わります。
- 技能実習制度からの主な変更点
- 制度の目的が「人材確保」と「人材育成」に明記される
- 本人の意向による転籍が一定条件のもとで可能に
- 対象分野が特定技能制度と原則一致し、幅広い業種に対応
- 監理体制が強化され、企業にも受け入れ準備が求められる
これにより、従来のような「送り出す側の都合で来日する実習生」という構造から脱却し、外国人が「選んで働ける」制度へと転換されます。
施行スケジュールと今後の見通し(2027年施行予定)
育成就労制度は2024年に制度設計が決まり、2027年を目途に施行予定です。
それに伴い、現在の技能実習制度は段階的に廃止されていくことが見込まれています。
現行の技能実習生を雇用している企業にとっても、今後の制度変更は無関係ではありません。
スムーズな移行のためには、法改正のスケジュールを把握し、必要な体制整備を今から始めておくことが重要です。
なぜ技能実習制度が見直されたのか|制度変更の背景

技能実習制度はもともと「国際貢献」や「人づくり」を目的として導入されましたが、長年の運用を通じて、制度の理念と現実との間に大きなギャップが生まれてきました。その結果、多くの課題が指摘され、制度の抜本的な見直しが必要とされてきたのです。
新たに創設される「育成就労」は、こうした問題を解決するための制度改革であり、制度の目的、運用の在り方、そして外国人労働者の立場や権利についても再設計がなされています。
ここでは、制度変更の背景となった主な課題を3つの視点から整理します。
実態と目的の乖離
技能実習制度は本来、「日本の技術や知識を開発途上国に伝えることで国際貢献を果たす」という建前で運用されてきました。
しかし現実には、人手不足を補うための労働力確保手段として活用されているケースが多く、制度本来の目的と実態との間に大きな乖離が生じています。実習期間中も職業訓練よりも単純労働に従事している実習生が多く、名ばかりの「実習制度」となってしまっているのが現状です。
人権侵害や劣悪な労働環境への指摘
さらに深刻な問題として、実習生の人権が十分に守られていない実態が多く報告されてきました。
たとえば、長時間労働・最低賃金未満の給与・パワハラ・暴力・自由な転職や転籍ができないことなど、劣悪な就労環境が問題視されており、実際に失踪者の数も年々増加しています。
こうした状況は、日本が国際的に見て「外国人にとって働きにくい国」と見なされる要因にもなっており、制度自体の信頼性を大きく損なう結果となっています。
人材獲得競争の国際化と日本の立ち位置
少子高齢化が進む日本では、外国人材の受け入れは不可欠な社会課題となっています。しかし今、アジア諸国を中心に外国人労働者を巡る国際的な獲得競争が激化しています。
たとえば、韓国や台湾は高水準の待遇や柔軟なキャリア設計を提示しており、外国人材にとって魅力的な就労先として台頭しています。対して日本は、制度の不透明さや処遇の厳しさから人気が下がりつつあるのが現実です。
このままでは、必要な人材を確保することすら難しくなってしまう可能性もあり、制度改革は“待ったなし”の状況でした。
技能実習と育成就労の違いを比較

育成就労は、これまでの技能実習制度の課題を踏まえて設計された新制度です。制度の名称が変わるだけでなく、目的・仕組み・対象分野・運用体制まで大きく見直されています。
ここでは、技能実習と育成就労の主要な違いを4つの観点から比較し、企業として押さえておくべきポイントを整理します。
目的・在留資格・期間の違い
項目 | 技能実習 | 育成就労 |
---|---|---|
制度の目的 | 国際貢献(人づくり) | 人材確保+人材育成(就労目的が明確) |
在留資格 | 技能実習1号〜3号 | 新設される「育成就労」の在留資格 |
在留期間 | 最大5年 | 最大3年(その後、特定技能への移行が想定) |
技能実習は「研修」の名目であるため、在留資格上も労働者ではなく「実習生」として扱われていました。これに対し育成就労は、外国人を「労働者」として正面から受け入れる制度へと変わります。
転籍の可否と条件
技能実習では、原則として転籍(就労先の変更)は認められていませんでした。例外的に「やむを得ない事情」がある場合に限り可能とされていましたが、手続きも煩雑で、実質的には難しい状況でした。
育成就労では以下の条件を満たせば、本人の意向による転籍も可能となります。
- 転籍条件
- 一定期間以上の就労実績があること
- 技能・日本語能力に関する試験に合格していること
- 転籍先の企業が適正であること
これにより、外国人材のキャリア形成や職場環境のミスマッチの解消が期待されます。
対象業種・分野の拡大
技能実習制度は、一部の業種・職種に限定されており、対象外となる分野が多く存在しました。
育成就労では、特定技能制度の対象分野と原則一致する形で、受け入れ可能な産業分野が大幅に拡大されます。これにより、より多様な業種で外国人材を受け入れることが可能になります。
監理体制と受け入れ企業の責任範囲
技能実習制度では、一部の監理団体や受け入れ機関の不適切な運営が問題となっていました。
育成就労では、監理・支援体制の厳格化が進みます。
- 育成就労制度の責任範囲
- 監理団体に外部監査人の設置が義務化
- 受け入れ機関の基準見直し
- 支援体制が不十分な場合は登録取り消しなどの厳しい措置
また、企業に対しても「昇給制度」「日本語学習の支援」「生活支援体制」など、より高い責任と準備が求められる制度となっています。
育成就労制度で企業に求められる対応

育成就労制度では、これまで以上に企業側の責任が明確になり、外国人材が安心して働ける環境の整備が求められます。制度に適応し、信頼される受け入れ先となるために、企業が取り組むべき4つのポイントを紹介します。
待遇や労働環境の整備(昇給制度・休暇・残業)
育成就労では「人材確保」と同時に「人材育成」も制度の目的に含まれており、処遇改善が大きな柱のひとつです。
- 待遇や労働環境の整備の例
- 勤続年数に応じた昇給制度の設計
- 適正な労働時間管理と残業の抑制
- 有給休暇の取得推進とその記録管理
- 差別のない賃金設定(日本人と同等水準)
これらを整備することで、外国人労働者のモチベーション維持と、転籍リスクの低減にもつながります。
日本語学習・文化研修などの支援体制
新制度では、外国人材のキャリア形成や定着を見据えた日本語・生活支援が重要視されます。
- 支援体制の例
- 日本語能力試験の受験支援
- 日常会話レベルの学習環境づくり
- 日本の生活習慣やビジネスマナーに関する研修の実施
- 社内コミュニケーション促進(通訳・翻訳サポートなど)
これらの支援は「優良企業」として認定を受けるうえでも評価される項目です。
受け入れ体制(連絡体制・預金管理・生活支援など)の見直し
外国人が日本で安心して働けるように、生活面を含めた受け入れ体制の整備が必要です。
- 受け入れ体制の例
- 緊急時の連絡体制や多言語対応の整備
- 給与の銀行振込管理と口座開設支援
- 住居の確保・ゴミ出し・公共交通の利用方法などの生活指導
- 相談窓口の設置(職場・私生活問わず)
生活支援まで視野に入れた体制構築が、外国人材から選ばれる企業づくりにつながります。
制度移行に向けたスケジュール管理と準備
育成就労制度は2027年の本格施行が予定されており、それに向けた計画的な対応が求められます。
- 制度移行への対応策
- 現在の技能実習生の扱いや移行対象の整理
- 就業規則・雇用契約書などの書面整備
- 支援機関や監理団体との連携強化
- 制度理解に関する社内研修の実施
制度が完全に移行する前から準備を進めることで、トラブルを回避し、スムーズな受け入れが実現できます。
育成就労と特定技能制度の関係とは

育成就労制度は、特定技能制度と密接に連動しており、制度間の“連携”を前提とした設計がされています。ここでは、育成就労と特定技能の関係性や、企業側のメリット・注意点について解説します。
制度の連携と移行パス
育成就労は、特定技能1号への円滑な移行を目的とした制度です。
従来の技能実習制度では、実習終了後の在留延長や転職が原則できませんでしたが、育成就労では段階的なステップアップが制度上認められています。
- 制度の連携と移行パス
- 育成就労(3年) → 特定技能1号(5年) → 特定技能2号(無期限)という明確なキャリアパス
- 特定技能制度とのスムーズな接続を前提に、教育・支援を実施
このように、制度間の連携が前提にあるため、育成就労は「将来的に長く働く外国人材」を育てる仕組みといえます。
特定技能1号・2号へのステップアップ
育成就労の終了後、要件を満たせば特定技能1号へ移行可能となります。さらに、経験・技能が蓄積されれば、特定技能2号へのステップアップも可能です。
- 特定技能1号・2号へのステップアップ
- 育成就労(3年間):教育・技能習得を受ける
- 特定技能1号:試験合格と就労実績により移行可能
- 特定技能2号:さらに高い専門性と経験が必要(永住や家族帯同も可能)
この流れを前提に人材育成することで、企業側は中長期的な戦力確保が期待できます。
企業の活用メリットと注意点
- メリット
- 長期雇用を見据えた人材育成が可能
- 定着率向上による教育コスト・採用コスト削減
- 特定技能2号への移行で、永続的な戦力として期待できる
- 優良企業認定で、受け入れ枠の拡大・手続きの簡素化も
- 注意点
- 就労管理・待遇面での不備があると制度活用不可
- 日本語支援や転籍リスクへの配慮が不可欠
- 法令改正や運用ルールのアップデートに継続対応が必要
制度を正しく理解し、長期的視点で人材を迎え入れる姿勢が、今後の企業価値にも大きく影響していきます。
育成就労制度でよくある質問(FAQ)

育成就労制度は新設されたばかりの制度のため、制度内容や企業対応について多くの疑問の声が寄せられています。ここではよくある質問をQ&A形式でわかりやすくまとめました。
施行はいつから?
A:2027年を目途に施行予定です。
政府は2024年に制度の創設を正式決定し、現在は法整備と各種準備が進められています。正式な施行日は今後の国会審議や制度設計の進行により確定しますが、2027年施行を目標に段階的な移行が見込まれています。
どの業種が対象になるの?
A:原則として、特定技能制度における特定産業分野と一致します。
詳しくは下記の記事をご覧ください。

今いる技能実習生はどうなる?
A:技能実習制度が廃止された後は、段階的に育成就労制度へ移行していく見込みです。
既存の技能実習生は、在留期間の満了まで従来制度の適用を受けることが想定されています。以後の新規受け入れについては、育成就労制度に一本化される方向です。
また、育成就労から特定技能へ移行する仕組みも整備されており、現行の技能実習生がスムーズにステップアップできる制度設計が進められています。
特定技能との違いは?
A:主に「目的」「受け入れ条件」「支援体制」の違いがあります。
制度名 | 主な目的 | 在留期間 | 企業の義務 |
---|---|---|---|
育成就労 | 人材育成+人材確保 | 原則3年 | 教育・支援体制の構築が必須 |
特定技能 | 即戦力の確保 | 1号:5年/2号:無期限 | 支援計画の実施義務あり |
転籍条件の具体例は?
A:以下のような要件を満たすことで、本人の意向による転籍が認められる予定です。
- 転籍条件
- 同一企業で一定期間(1〜2年程度)就労している
- 技能検定試験(基礎級)または日本語能力試験(N4程度)に合格している
- 転籍先が適切であると認められる(待遇・業種・支援体制など)
これにより、労働環境の改善やキャリアアップを目的とした転職が制度上認められ、外国人労働者の人権やモチベーションの向上につながります。
まとめ|育成就労は“人材確保”だけでなく“人材育成”の視点で準備を
育成就労制度は、「国際貢献型の制度」だった技能実習から脱却し、人材確保と育成の両立を目指す新たな制度として創設されました。
企業にとっては、これまで以上に「外国人材に選ばれる職場づくり」や「適切な支援体制の構築」が重要になってきます。
その一方で、制度の施行は2027年を予定しており、現時点ではまだ詳細が固まっていない点も多くあります。
今すぐ人材を確保したい企業や、即戦力を求める現場にとっては、すでに整備されている「特定技能制度」の活用が、現実的かつ効果的な選択肢となります。
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